今こそ聞こう、かかしの名曲 vol.2
今こそ聞こう、かかしの名曲 vol.1 - Add Some Comedy To Your Day
さて、かかしの続きである。
あらためて聞いてみると、曲の方はドンピシャで私好みなのだ。色物であることには変わらないが、CDを買って損をした気には絶対ならない(と思う)。この記事を読んで、ぜひ購入を検討してほしい。再始動を機に、アルバムを飼ってみようという奇特な方がいらっしゃったら、後述するベスト盤をオススメする。というか、「ベスト盤」ってなんだ。すごいな。一昔前は「ベスト盤」ってメジャーで成功してる大御所の人が出すようなイメージだったんだけど。
ま、でも今はサブスクで聞けるので、まずはそっちで聞いてみてからでいいと思います…。
かかしのて~ま
始まりはサザンの「太陽は罪な奴」風。1番の「でもホモじゃない~」という部分のメロディーが、何かに似てるんだよな~と、もやもやニヤニヤしていたら、2番の最後でしっかり「君かわいいね~」とネタ元を公開してくれる優しい曲。その唐突なネタばらしまでの1分40秒はすべて前フリ。
仮に自分がこのバンドのメンバーで、「うちのバンドのテーマ曲を書いてきたよ!」と言われてこれを渡されたらたぶんキレていると思う。そういう意味でも、つくづくこの人たち仲がいいな、と思う。
新車でGO
これは確かカラオケに入ってたと思う。1回歌ってまあまあウケた。
「車を愛する女性に例える」という手はビーチボーイズの時代からあったが、それを極端にやり過ぎた曲。「CAR は SHE」の逆直訳に脱力させられる。
トーク上手
お、セカンドライン!私はこの手の南部風の感じが好きなのだ。唸るスライドギターと後ろで鳴ってるバンジョーが見事にサザンロック。
「トーク上手」というタイトルから、
「口で喜ばせる」→「床上手」
というワードにいつのまにか変換されているというストーリー。これは前フリの短さがかえって面白さにつながっているパターン。かなり前半から、誰が聞いても完全に「床上手」の方を連想させるワードが出てきて、2番に至っては「床上手」しか言ってない。なんぼほど「トーク上手」に対しての興味が失せるの早いんだ、ひどいな男の性欲、という、そういうアイロニー。
ジャンピング・ロックンロール・ミュージック・フラッシュ!!
「マジで超ロックな男とはどんな男か考えよう」という大喜利の解答を並べたような歌詞。マジで超ロック。ミッシェルもレイラもアンジーも、まとめてホテルカリフォルニアで抱こうとする。
40になったら
かかしの初代リーダー・再始動後は行方不明、菊池淳介の40歳の誕生日を記念して作られた曲。なので、メインボーカルはきっくん。
これ、メチャクチャ好きなんだよなあ。オッサンになるということの哀しさと孤独がこんなに生々しく表れた曲はないんじゃないだろうか。誰に何も言われてないのに、全力で「ひどくなんてないぜ 40はひどくない」と弁解する姿の何と痛々しいことか。
間奏のペダルスチールのソロが泣ける。弾いているのはサポートメンバーの鈴木俊介。
スナック【植村花菜と玉川美沙とかかし】
異色のコラボ曲。歌詞は、鬼玉で2010年までバカボン鬼塚とともにメインパーソナリティを張っていた玉川美沙。メインボーカルは、まだ「トイレの神様」でブレイクする前の植村花菜。おに魂の最終回のラストナンバーとして流れた。深夜に聞くとしんみりする曲。
24時間パートⅡ
これぞ、「最高のメロディーに最低の歌詞を」というモットー通りの曲。この曲をCDにして出したことに、惜しみない賛辞を送りたい。
イントロからムンムンと立ち込める、まだ日本が輝いていた90年代の匂い。洒脱なアレンジ。ボーイ・ミーツ・ガール。僕らがあこがれていた、あの東京という街の夏の風景がここにはある。そう、サビの歌詞さえなければ…。引用することすら憚られるので、あとはご自分で聞いてください。
まあ、ある意味ではそういう都会の〈ボーイ・ミーツ・ガール〉モノの真実を限りなくありのまま描写した曲とも言える。だが、ポピュラーミュージックの中で、不都合な真実を描写することは求められない。ポストモダンのエンターテイメントはみな、シュミラークルでなくてはならないのだ。そんな現状に一石を投じる一曲でもあるのではないか。
甲州街道
これはアイディア一本という感じ。彼女との待ち合わせ場所に「甲州街道のコンビニ」を指定された男の悲喜劇。
デビューシングル「不幸子」もそうなのだが、かかしの歌で描かれる悲劇が、同時に相当喜劇的でもあるのは、「ちょっと考えればそこから抜け出せるやん」という類の不幸話が多すぎるからである。この曲の場合もそうだ。好きな女の子に「デートの集合場所は、甲州街道のコンビニね!」と言われたら、その時点で男が抱くべき疑問は二つに一つだ。一方は「甲州街道のどこ?」で、もう一方は「もしかして俺、体よくフラれた?」である。どちらが正解というわけではないが、人生という名の街道をうまく旅する人間は、きっと後者を選ぶのだろう。それを選べなかったからこそ生まれた悲劇であり、喜劇である。
これもアレンジが好き。
山田うどんの歌
北関東ではおなじみの外食チェーン、山田うどんのテーマ曲。イントロは「Here Comes The Sun」で、途中の「ウーランララン」のコーラスは「Nowhere Man」か?映画「翔んで埼玉」で使用され、ファンの間では一瞬話題になった。
すぎ(独唱)
「セックス」以来、実に13年ぶりに発売された2010年のシングル。それがこれかい!
タイトルがすでにヤバイが、実際聞いてみるとド頭から森山直太郎宅に居直り強盗をキメている。ラジオで「ぼ~くらは~」が流れた時点でもうダメだった。
- アーティスト: かかし,柴田淳,move,kainatsu,高橋直純
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックダイレクト
- 発売日: 2012/07/11
- メディア: CD
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ドリパ
ドリー・パートンは男の子の憧れ。詳しくは拙ブログ記事を参考。
あねもね
あえてそれっぽい言葉で表現すると「叙述トリック」。最後の最後で明かされる真実に、「ああ、タイトルそういう意味…」と、一杯食わされる。
浜田省吾とさだまさしを足して2で割ったような歌詞と、演歌とブルースを足して2で割ったような曲。これはホントにギリギリまでいい曲。この「足して2で割る」というのが、ある意味では曲のテーマ。
すぎ(アルバムバージョン)
前述したシングルバージョン「すぎ(独唱)」は、さすがにやりすぎて直太郎サイドに怒られたんじゃないかという憶測。そして、シングルバージョンとアルバムバージョンは通常アレンジが異なることが多いという音楽通の常識。これらすべてが壮大な前フリとなる究極の出オチ。直太郎どころか、フレディ・マーキュリーまで巻き込み事故を食らう。自分たちのシングルをフリに使うという超高度な笑い。シンギンッ!
ウン・コモ・ラ・シータ
こんなにも下らない曲があっていいのか。いや、ある意味では、「下る」曲の極致でもあるか。
「最高のメロディーに最低の歌詞を」というかかしのモットーがこれほど前面に表れた曲もない。おそらくジプシーキングスを意識したスパニッシュ風アレンジとメロディー。ガッチリ決まったアンサンブル。そして村上雄信のギターのかっこいいことかっこいいこと。それらすべてをクソまみれにするクソみたいなクソの歌詞。緊張と緩和。
何もうまくいかずふさぎ込んでいた社会人3年目の私が、泣くほど笑って感情を取り戻した一曲である。
リンクを張ったライブバージョンでは、4分40秒あたりからほとばしるきっくんの怒涛のラテン風コーラスが素晴らしい。
赤いイナズマ
マッチがあんなことになってしまった今だからこそ聞きたい名曲。ベスト盤「未定」に収録されたボーナストラック。ベスト盤?ボーナストラック?どこの大物ミュージシャンなんだいったい。
一聴してわかるが、元ネタは近藤真彦の「ブルージーンズメモリー」「ケジメなさい」他多数。というか、「近藤真彦」という個人の人格を超えて、「マッチ」という、ある年代の心の中で神格化された存在そのものに対するパロディ。神への挑戦、もしくは冒涜。
イントロ、そして「フッフッフッカ~ニバルッ フッフッフッフェスティバルッ」のふざけきったコーラスの時点で、絶対にこんな曲をマッチが歌っているわけがないことが頭では理解できるのだが、しかし同時に間違いなくマッチ以外の何物でもない。「赤いイナズマ~」と開き直りを決められる頃には、私たちはかかしの奏でるマッチワールドにすっかりのめりこんでいる。メインボーカルはこの曲でのみ突然「キッチ」を名乗る、菊池淳介。
2021年現在、マッチもキッチもメディアへの露出はない。
以上です。
一人でも多くの方にかかしの魅力を知ってもらえれば幸いです。
では、君に~完敗〜。