「あ~よかったな、ユーミンが夭折してなくて」と思える、松任谷由実、21世紀の名曲ベスト30 vol.1
※他意はありません。
※記事内に、私個人の政治的信条は一切反映されておりません。なんかにじみ出てたらすいません。
※好きな曲をA to Zで並べています。順位はありません。
※他意はありません。
いってみよう!
acacia[アカシア]
コアなファンから「21世紀ユーミンの最高傑作は」という投票を取ったら、たぶんこのこの曲が1位になると思う。みずみずしい生ギターのイントロで、天才少女ユーミンが帰ってきたと思ったファンも多いはず。
歌詞は、「アカシックレコード」という、ちょっとスピリチュアル要素のある考え方から生み出されたもの。その骨子は、宇宙の行く末から個々人の人生、感情の起伏まで、その歴史すべてがデータバンクになっている、というもの。抽象概念だけ提示されると、かなりのオカルト臭が漂い、結構引くが、ユーミンの手にかかるとそうした臭みは消失し、不思議と共感に包まれるからすごい。
古くは「不思議な体験」、最近だと「宇宙図書館」などにも出てくるテーマだが、曲の良さではこれがNo.1だろう。サウンドは21世紀版「やさしさに包まれたなら」という感じだが、ユーミンの声は歳をとった。だけど、この曲はこの声だからいいのである。
なつかしすぎる未来が たったひとつの探し物
というキラーフレーズが泣かせる。
Bonne année
フランス語で「新年あけましておめでとう」の意味。ユーミン聞いてるとフランス語も覚えられるのだ。
個人的な話だが、この曲が収録されている『WINGS OF WINTER, SHADES OF SUMMER』というアルバムは、僕が初めてリアルタイムで勝ったユーミンのオリジナルアルバムなので思い出深い。
ユーミンのお正月ソングと言えば、「A Happy New Year」という、押しも押されぬ大名曲があるが、それとはまったく趣の違う、ほろ苦失恋ソング。このアルバム全体に言えることだが、歌詞のテーマと、サウンドの適度な距離感、「遠さ」がとても良い。とても感傷的なテーマを、(一聴すると)無機質に思えるように仕立てるのがユーミンの得意技なわけだが、この曲のどこか他人事のような瀟洒なアレンジが、「新年を、大好きなあなたと迎えられなかった」という重い孤独感を突き放していて、かみしめるほどに切なさがあふれてくるのである。好きな曲。
Early Springtime
逆にこの曲はめちゃくちゃ距離感の近い、ストレートな8ビートのロック。わかっててもサビの階段進行でグッときちゃう。
社会人になってから聞いた曲なのに、なぜか中学生だったころのことを思い出しちゃう。
Forigiveness
「許し」がテーマのバラード。個人的にはユーミンの全キャリアを通してもベスト10に入る超名曲だと思う。間違いなく、年齢を重ねたこの時のユーミンだからこそできた曲であり、取り組めたテーマだった。
思えば、ユーミンの曲は、常に自分の感情に正直な女性が主人公だったように思う。そしてその正直さは気まぐれと表裏一体で、男にとっては一筋縄でいかないことも多かった。
では、この曲で歌われている「許し」というテーマは、そんな正直な生き方に妥協することなのか。そうではない。
大切な誰かを ずっと愛し続けるため
と歌われているように、「許すこと」とは、この先も愛をはぐくみ、自分も相手も幸せに生きていくための知恵である。この知恵に気づくことができるのは、傷つけ傷つけられ、正直な感性で生きてきた人だけなんじゃないかと思う。少女のような天才性でも、老いに抗う気概やガッツでも、逆に諦めや開き直りでもない。年齢を重ねたからこそのユーミンの豊かな人生観が自然に、だが毅然と表現されていて、もちろん夭折していたら生まれえなかった曲。素晴らしい。
Hey girl! 近くても
なんか「Revolver」あたりのビートルズっぽいサウンドで好きです。
Invisible Strings
弦のアレンジがいい。ユーミンの視覚的な、特に雨の情感がすごくビジュアルで脳に浮かぶこういう曲が好き。
Lundi
これ、どうなんだろう。コアなファンからどういう扱い受けてます?この曲。俺は好きなんだけど。古参のファンとはとらえ方違うかもね。俺がユーミンのファンになった時点では、この曲もこの曲が収録されたアルバム『acacia』も、すでに過去の作品で、そういう意味では荒井時代と扱いは変わらないんだよね。ある意味この辺が、後追いファンの強みかもしれない。
「Lundi」はフランス語(またも)で月曜日の意味。恋人と別れて起きたら、一週間の中で一番焦燥感に急き立てられる月曜日の朝、というのは不幸なのか幸せなのか。忙しさによって別れのつらさを飲み下す、悲劇的に前向きな、不思議とどこかポジティブな曲。「私」を待っているのが「誰か」ではなく、「私」自身なのが、21世紀的強い女性像を提示していて良い。
Northern Lights
北欧の音楽など聞いたこともない中学時代の自分が「北欧っぽい」と感じたのだから、ユーミンの表現力はすごい。
Song For Bride
ユーミンの結婚ソングは、自分と結婚相手とのストレートなストーリーじゃなくて、サイドストーリー的な、結婚式の、その日その時には 口に出して伝えられないような思いを歌った曲のほうが名曲になる傾向があります。
女友達に心の中でこっそり送った、優しいメッセージを歌にした、ほろりと来る曲。
Sillage ~シアージュ
アルバム(『宇宙図書館』)だと、この曲の後の「AVALON」がキラーチューンというか、全体の肝として設定されてるっぽいんだけど、俺はこのさりげない小品のほうが好きなんだよねえ。「Sillage」は、(またまた)フランス語で、船の通った後の水面のこと、または香水の残り香のことだそうです。足跡ほどしっかりと残っていない、過去に残してきた痕跡ということかな。そうした、意図していなかったほんの些細な痕跡の積み重ねで、こんなところまで来てしまったことの孤独感、もしくは、こんなところまで来れたよ、という充足感、それがまじりあったような、不思議な香りを漂わせた曲。
Summer Junction
サビのメロが超好き。ギターのサウンドが往年のシティポップを感じさせると思ったら、鈴木茂が弾いていた。
あと2回続く予定。