ブラックミュージシャンのビートルズカバー 9選
好きな料理を、ものすごく濃い味付けで食べたい!
発表された公式曲全213曲が、全てカバーされているビートルズですが、ジャンルや人種の壁を越えて、多くのブラックミュージシャンもそれに挑戦しています。
もともとビートルズ自体が、チャック・ベリーやリトル・リチャードなどのロックンローラーや、シレルズやマーヴェレッツといった黒人ガールグループのエッセンスを、曲作りや歌唱法に生かして成長してきたわけです。ゆえに黒人によるビートルズのカバーは、「アメリカ→イギリス→アメリカ」の音楽の反響の様子が刻まれていて、興味深いものがあります。
というわけで、夏だからこそ聞きたい、くどい、暑苦しい、素晴らしい、ビートルズのブラックカバーをご紹介します。
チャカ・カーン 「We Can Work It Out」
We Can Work It Out - Chaka Khan
とぐろを巻くシンセベースが80年代をバリバリに感じさせる名カバー。ソウル路線チャカが残した最高傑作『WHAT CHA' GONNA DO FOR ME』の1曲目に収められた。
ハービー・ハンコック、リチャード・ティー、マイケル・ブレッカー、ランディ・ブレッカー、ラリー・ウイリアムスなど、見ているだけで胸焼けしそうなフュージョンファン垂涎の一流ミュージシャンを従えて飛ばしまくる、チャカのボーカルの頼もしさ!
原曲は、前半の明るいAメロをポール・マッカートニーが書き、一転悲観的な「Life Is Very Short~」からの後半部分をジョン・レノンが書いたナンバーで、その落差こそが聞きどころ。チャカのバージョンは、猛スピードでこの直下と上昇を繰り返す、最高に消費カロリーの高いものに仕上がっている。
ビリー・プレストン 「Blackbird」
ビートルズ解散間際の「ゲット・バック・セッション」及びアップル屋上ライブにも参加したキーボーディスト、ビリー・プレストン。そのビリーが1972年の『Music Is My Life』の中で発表した隠れた名カバー。
オリジナルは、ポール・マッカートニーがギター一本で弾き語る人気曲。前半は、原曲にあったトラッドでフォーキーなイメージを生かしつつ、抑え目な曲調で進行するが、後半へ進むに従い、徐々に彼のソウルが漏れ出していくのがたまらない。ビリー・プレストンらしい渋さと茶目っ気にあふれた、歌心のあるバージョンに仕上がっている。
オーティス・レディング 「Day Tripper」
サザンソウルの雄、オーティス・レディング。彼の傑作ライブアルバム『LIVE IN EUROPE』からのバージョン。
「Day Tripper」と言えば、イントロのギターリフが印象的だが、オーティスのバージョンはいきなりサビからなだれ込み、その後は汗と唾液を振りまき続ける怒涛の展開に。
もともと、1966年の『ソウル辞典』というアルバム(身もふたもない邦題)の中で同曲をカバーしたオーティスだが、このライブバージョンではそこからだいぶテンポをあげてまくし立てる。後半、止まらない「ガッタガッタ」攻撃に震える。
アレサ・フランクリン 「Eleanor Rigby」
Aretha Franklin - Eleanor Rigby (Live at the Fillmore West)
お次もライブ盤から。世界最高のボーカリスト、アレサ・フランクリンが1971年に発表した『Live At Fillmore West』に収録されたバージョン。孤独な人たちの悲しみを歌ったこの曲も、アレサが歌えば強烈なダンスナンバーに早変わりする。
大仰なバラード感はなく、軽めに処理しているのがポイント。グル―ヴィー!
ザ・ミーターズ 「Come Together」
鬼クソカッケー!ニューオリンズのファンクバンド、ミーターズの未発表曲を集めたアウトテイク集『The Meters Jam』に収められたバージョン。録音はおそらく1975年前後と思われる。
オリジナルの「Come Together」という曲自体に、かなり黒いフィーリングが漂っていたわけだが、ミーターズのバージョンはさらにファンク色を増し増しにした、まさに真っ黒けバージョン。ド頭の超ヘビーなギターに、粘っこいアート・ネヴィルのボーカルが乗っかる瞬間がたまらない。
もともとこの「Come Together」という曲が、チャック・ベリーの「You Can’t Catch Me」というナンバーをジョン・レノンが借用することで出来上がったというのは有名なエピソード。〈チャック・ベリー → ジョン・レノン → ミーターズ〉という過程で黒さが煮詰まっていくサマは、〈アメリカ → イギリス → アメリカ〉のダイナミックな音楽のラリーが肌で感じられて、実にスリリング。
アイク・アンド・ティナ・ターナー 「She Came In Through The Bathroom Window」
Tina Turner She Came In Through The Bathroom Window
何を歌っても最高な、ティナ・ターナー。まず、選曲が渋い。『アビーロード』に収められた、後半のメドレー部分の1曲を、最高にソウルなバージョンに仕上げた。オリジナルのビートルズバージョンも、メドレーの前曲にあたる「Polythene Pam」を受けて、ド頭からポールがかます構成になっているのだが、ティナ・ターナーの「かまし」方はちょっと尋常じゃない。この音源は長いことCDが見当たらなかったが、最近エースから出たコンピに入っていて狂喜した。個人的にはキャンディ・ステイトンと並んで大好きな女性歌手の一人。
アース・ウィンド・アンド・ファイア 「Got To Get Into My Life」
Earth, Wind & Fire - Got to Get You Into My Life (Audio)
オリジナルは、ビートルズが初めてブラスセクションをオーバーダビングした力強いナンバー。ポールがモータウンに影響されて書いた曲。サイケ色の強い『リヴォルバー』の中にあって、比較的地味目な一曲であったが、まるで最初から自分たちのものだったかのようにEW&Fがカバーし大ヒット。1978年に全米9位、ブラックチャートでは1位まで上昇した。先に挙げたエースのコンピにも入っている。
ウェス・モンゴメリー 「A Day In The Life」」
Wes Montgomery-A Day In The Life
ジャズ畑からも一人。オクターブ奏法でおなじみ、ウェス・モンゴメリーのヒットアルバムから。
オリジナルは、ロック史上最高にエポックメイキングな『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の中の大曲だが、あくまでソフトでBGM的に扱ったのがミソ。こうした軽い扱いでこそ本来の美メロが浮かび上がる。アレンジを担当したドン・セベスキーの、発想の勝利。
ウィルソン・ピケット 「Hey Jude」
Wilson Pickett - Hey Jude (w/ Duane Allman)
最後はやっぱコレ!うーん、暑苦しい。実に暑苦しい。サイコーだ、ウィルソン・ピケット。ちなみにギターは、オールマン・ブラザーズのデュアン・オールマン。
以上です。オーディオ置いてある部屋にクーラーがないので、汗だくになりながらヘッドホンで聞いてたら倒れかけました!暑苦しい音楽を聞くときは皆さんもご用心を!
ではでは。