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走るのに最適なビートルズのアルバム決定戦〜RUNNING with The Beatles vol.3

「走ると何もかもうまくいく」なんて言う人もいますけどね、そんなこともないです。というか、ランニングにしても何にしても、「これさえやっとけば大丈夫」なんてものはないんです。人生、そんな単純ではない。

ただ、走ることで少なくとも精神的なストレスはだいぶ減りました。人間、抱えられるストレスの量には限界があって、「あの件の納期が」とか「あの件の電話かけそびれた」とか、そういう類の悩みが、「息が苦しい」とか「足が痛い」とか、そういう肉体的な圧迫の前では相対的に些事でしかなくなるというだけですけどね。別に納期の問題や電話かけなきゃいけない問題が解決するわけではないんですが。

 

ということで、嫁実家との新春マラソン大会という鬱イベントは乗り越えましたが、この企画は終わりまで続きます。今回は中期~後期のアルバム群となります。

 

 

『REVOLVER』

 

リボルバー

リボルバー

 
  • タイム 53.05
  • 走行時爽快感 ★★★
  • ベストランニングソング 「And Your Bird Can Sing」
  • ワーストランニングソング 「Love You To」

好きな曲とそうでもない曲が入り混じるアルバム。特にジョン・レノンの曲にその傾向が強く、無条件にかっこいい曲もあれば、相当頑張って理解しようとしないと聞けない曲も多い。『リボルバー』はまだ頑張らなくても聞ける曲が多いが、それでも「I'm Only Sleeping」「Tommorow Never Knows」など、テープ操作に凝り始めたドラッギーな曲を酸素が薄い状態で聞くのは辛かった。それだけに、ジョンとジョージのツインギターがさえまくる「And Your Bird Can Sing」の爽快感は素晴らしく、ここでヒザのギアが2段階くらい上がった気がする。文句なしのベストランニングソング。


The Beatles Rock Band And Your Bird Can Sing Outfit #1 (Budokan)

翻って、ここからのポール・マッカートニーの打率が凄まじいのは周知のとおり。どう考えてもランニング向きではない「Here, There And Everywhere」や「For No One」などの曲ですら足の重さを忘れさせてくれたのは、名曲のもたらす多幸感によるもの。特に「Got To Get You Into My Life」は素晴らしい。惜しくもベストランニングソングには選ばれなかったが、力強いブラスが足腰に踏ん張りを与えてくれた。

ワーストランニングソングに選ばれてしまった「Love You To」はジョージ・ハリスンの曲だが、別にジョージだけが悪いというわけでもなく、前述のドラッギーな「I'm Only Sleeping」と続きであることも理由だったりする。「Taxman」は走りやすかった(主にポールのベースのおかげで)。

全体的には走りやすい曲とそうでもない曲が混在し始め、個人的にも「ビートルズは初期に限る」と思っている人間なので、テンションもそこまで上がらずタイムは落ち着いた。

 

 

『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』

 

  •  タイム 55.04
  • 走行時爽快感 ★
  • ベストランニングソング 「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band(Reprise)」
  • ワーストランニングソング 「Within You Without You」

走る前から「嫌だな~」という気持ちがかなり大きかった。これ、アウトドアじゃなく、部屋で一人の時にヘッドホンして聞く類の音楽だろう。

大体私は「コンセプトアルバム」というものの良さがイマイチわからない。わからないなりに(むしろわからないからこそ)相当聞き込み、次に何の楽器が鳴るかはおろか、「Good Morning Good Morning」のラストの動物の鳴き声の順番まで暗記しているくらいだが、それだけに事前の「嫌だな~」の予想が覆ることはなく、苦しいレース展開を強いられた。

一般的にこのアルバムは、SEてんこ盛り、テープ操作しまくりの、レコーディング技術の粋を集めたアルバムとしての評価が高い。が、「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」「同リプライズ」や、「Getting Better」「Lovely Rita」などの曲で核となっているのはビートルズのバンドとしての演奏の上手さである。カラフルに着飾ってはいるものの、よくよく聞けば武骨なロックンロールが本質であるこれらの曲は、まだ走りやすいという印象であった。

 

Lovely Rita

Lovely Rita

 

事前予想では、あま~いストリングスで埋め尽くされた「She's Leaving Home」がワーストランニングソングに選ばれると見ていたが、ジョージのインド愛あふれる「Within You Without You」がそれを上回った。インドが全部悪いわけじゃないが、全編説法やってるみたいなジョージのボーカルが輪をかけて酸素不足の体を苦しめた。そして何より曲が長い!『サージェント~』の中で5分を超えてる曲はこれと「A Day In The Life」しかない。結果1km程ジョージの個人的な趣味に付き合わされることになり、体力を大きく消耗した。これだったら本格的なカレー屋で流れてるダンサブルなインド歌謡の方がずっと走りやすい。

 

インドカレー屋のBGM

インドカレー屋のBGM

 

 その他の曲も足がぐいぐい進むようなものがなく、結果的にタイムが大幅に後退した。ラスト50mほどで「She's Leaving Home」が始まったときは、ほとんど「何か鳴ってるな」くらいの感覚しかない状態であった。これがいわゆる解脱というものなのかもしれない。

 

 

The Beatles

 

 Disk1
  • タイム 52.05
  • 走行時爽快感 ★★★
  • ベストランニングソング 「Back In The USSR
  • ワーストランニングソング 「I'm So Tired」
Disk2
  • タイム 54.05
  • 走行時爽快感 ★★
  • ベストランニングソング 「Savoy Truffle」
  • ワーストランニングソング 「Revolution 9」

 2枚組で収録時間が長く、指定距離を走る間に全曲聞き通せないため、2回に分けた。この手間だけでかなりのマイナスポイントだが、青春時代だいぶお世話になったアルバムでもあるので、そこは目をつぶることとする。

ベスト・ワーストランニングソングともども、大筋同意が得られるのではなかろうか。

まず、走りにくかった曲から振り返る。「I'm So Tired」が流れたときは、全身の細胞が「わかっとるわい!」と突っ込みを入れたが、これはまだかわいい。問題はDisk2の「Revolution 9」で、わかっていたことではあったが8分間延々と拷問としか思えない時間が続き、こんなものを聴いて走っている自分のドMさ加減にあきれ返ったほどであった。

 

Revolution 9

Revolution 9

 

「Wild Honey Pie」も、疲れた体をイラつかせる効果があるのは間違いないが、1分足らずの曲なのでまだ良心的と判断し、ワーストランニングソングには選ばなかった。その他、「Julia」は女々しさが過ぎる、「Helter Skelter」はうるさい、「Long Long Long」はゆったりしすぎ、「Good Night」は寝たらあかんやろ、という理由でそれぞれマイナス要因となった。全体の傾向として、特にこの時期のジョンの曲は変拍子が多いのでペースをつかみにくく、「Revolution 9」がなかったとしてもランニングには向かないアルバムという判断は揺るがなかったと思われる。

逆に、極端に走りやすかった曲と言えば、ベストランニングソングとして挙げた2曲だが、特にジョージの「Savoy Traffle」は意外な健闘で、前作の「Within You Without You」の汚名を晴らす爽快な走りぶりを見せた。

 

Savoy Truffle

Savoy Truffle

「Blackbird」は久々に村上春樹感を感じる曲だったこともあり、高得点。その他「Glass Onion」「Ob-La-Di, Ob-La-Da」「Birthday」「Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey」などの曲がまあまあ走りやすかったか。

まあこのアルバムに関しては、「Revolution 9」でランニングするのはやっぱりきつい、という事実を体で実感できたことが収穫だと思うしかない。全世界で見てもこの曲をBGMにして走った経験がある人って数えるほどしかいないんじゃないだろうか。もし「自分がそうだ」という方がいらっしゃったら教えてください。

 

 

ということで、この辺にしておきましょうか。やっぱりきつかったですね、中~後期。

次回は『マジカルミステリーツアー』『レットイットビー』『アビーロード』の3本です。お楽しみに。