荒井由実「晩夏(ひとりの季節)」を参考に、夏から秋へのグラデーションを作る
「晩夏(ひとりの季節)」という曲は、ユーミンがまだ荒井由実だったころのアルバム、『14番目の月』の中に収録されています。アルバムの最後に収められた曲であり、また、この『14番目の月』というアルバム自体、ユーミンの結婚前最後のアルバムでもあります。ですので、この曲が実質的には荒井時代のラストを飾る一曲とも言えるでしょう。
- アーティスト: 荒井由実
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2000/04/26
- メディア: CD
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この「晩夏(ひとりの季節)」は、本当に素晴らしい曲で、繊細な色彩感覚と、それを音像化する鋭敏な表現力の2つがピークにあった、このころのユーミンならではの曲、という感じがします。後に平原綾香がカバーしていますが、夏から秋への非常に不安定な、けれど確実に進み行く季節の移り変わりの描写力という点では、ユーミンのノンビブラートで歌われるオリジナルに分があるのではないかな、と思います。
語れば魅力の尽きないこの曲ですが、やはり注目はサビの歌詞でしょう。
空色は水色に
茜は紅に
やがて来る淋しい季節が恋人なの
二番は
藍色は群青に
薄暮は紫に
ふるさとは深いしじまに輝きだす
この歌詞がメジャーセブンスのコードに乗っかって、あくまで淡々と、ユーミンのノンビブラートで歌われたときの感動は、とても言葉では言い表せません。「今年の夏はもう二度と戻らない」という当たり前の現実が、鮮やかな情景として眼前に広がります。音楽を通した視覚表現はユーミンの得意技ですが、その中でもこれは、ユーミンの全キャリアを通してトップ3に入る完成度だと思います。
さて、聞き手の想像力を刺激する表現だからこそ感動を誘うのが音楽ですが、野暮を承知で、今日はこの色彩表現をイラレを使ってビジュアル化してみました。「空色」「水色」「茜」「紅」「藍色」「群青」は、それぞれJIS規格の慣用色名として規定されており、マンセルの参考値が存在しています。
あくまで慣用色なので、厳密な規定ではありませんが、指標としては有意義と言えるでしょう。マンセル値はイラレにない指標なので、適当に変換したうえでグラデーションにします。するとこうなりました。
全体的には、空気がカラリとしてくるぶん、彩度が少しだけ上がる傾向にあるみたいです。感覚的には理解していたつもりでしたが、こうやってビジュアルにするとあらためて、なんと繊細で美しい変化なのかと思わずにいられません。時の流れの不可逆性を、色名だけで絶妙に表現するユーミンの描写力にあらためて脱帽です。
とりあえず、作ったグラデーションは「晩夏スウォッチ」として保存しましたので、ほしい方はこの記事をブクマしてね!よろしく!