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Add Some Comedy To Your Day

フリーの小噺と好きな音楽

明日使えない、ビートルズ喩えネタで文章を作る

ロックとかポップスとかの音楽を主に聴いてますが、それに付随するライナーノーツやらレコードガイドやらの読み物には、お馴染みというか、ある種常套句になっている表現がいくつかございまして、その最たるものが、「ビートルズでいうと、云々」という喩えネタでしょう。

 

ザ・ビートルズ・CDガイド レコード・コレクターズ2009年10月号増刊

ザ・ビートルズ・CDガイド レコード・コレクターズ2009年10月号増刊

 

 

 

雑誌なんかでこの手の表現を見かけると、「お、キタキタ」という感じで思わずニヤニヤしながら読んでしまいます。代表的な例を挙げるとこんな感じでしょうか。

 

 

ビートルズの「サージェントペパーズ」に相当する

そのグループが初めて挑戦した、本格的なコンセプトアルバムであることを伝える表現。

 

 

ビートルズでいうと、「ストロベリーフィールズ」に当たる、エポックメイキングな曲

曲の中身は適宜変わるが、後期ジョンの曲が入ることが多い。「なんかわからんが複雑になったな」という時に使われる表現。

 

  

ビートルズの中の、ジョージ・ハリスン的な存在である。

ジョージも、例えられた人物も、同時に軽くディスられていることが多い。バンド内に派手なヤツが2人いて、その影に隠れた地味なメンバーが曲を書いてきたときに使われる表現。

 

 

 

この辺はもうあたりまえに使われる表現で、枕詞の「ビートルズで言うと」が省略されることもあるくらい定着しているのであります。喩えとして現実感のあるこれらの表現はまだいいのですが、酷いのになると、

 

ラバー・ソウル」と「リヴォルバー」の中間に位置するアルバムのようだ

 

 みたいな、雑なヤツもあります。存在しないモノで例えるって、それ、比喩として成立してないじゃん、と思うのですが、まあそれだけビートルズという存在が、ロックファンに広く浸透した共通言語になっているという証左でもあるのでしょう。また、マニアックな比喩を使えば、書いた側もそれを読む側も、自分の知識の広さに酔うことができるという、スノッブ極まりない楽しみもあって、前述した、わかったようなわからないようなオタクな例えが日々生み出され続けているのです。

 

今回は、ずっと使えない―ビートルズでたとえると、「Yesterday」も「Here Today」も「Tomorrow」も「Another Day」も使えない―ビートルズ喩えネタをたくさん生み出してみました。事例として、それをムリヤリ駆使した物語を書いてみたので、ぜひ最後までお付き合いください。

 

ビートルズたとえ物語

 僕が彼女を呼び出したのは、初めて二人でデートした思い出の丘。まるで初期ビートルズのような恰好で*1僕は腕時計を見た。待ち合わせの時間から3分しかたっていないのに、ずいぶん長い時間が経過したように思える。まるで、「Slow Down」のイントロ*2だ。10分遅れで彼女はやってきた。

 

「ごめんね、遅れちゃって。ビートルズでいうと『Aisumasen*3』」

「いや、僕も今来たところだ」

 

嘘だ。ビートルズでいうと「嘘つき男」*4だ。本当はもう1時間も前から待っていた。飛行機の音が近づいてくる。ビートルズでいうと「Back In The USSR」の冒頭*5だ。

 

「君に伝えたいことがある。ビートルズでいうと『I Want To Tell You*6』。僕と『ホワイトアルバム』になってくれ*7。」

 

彼女は、声にならない声―ビートルズの「The」のような*8―をあげ、まるで「ラバー・ソウル」のジャケット写真のように顔を歪めた*9

 

「絶対に、ほかの女の子、ビートルズでいうと『Another Girl*10』に浮気しないって約束できる?」

「約束する。ビートルズでいうと『今日の誓い*11』」

「信じられない。ポール死亡説ね*12。私も、あなたにとっては5人目のビートルズ*13の一人に過ぎないんでしょ!」

 

そう叫ぶ彼女を、僕は「I Want To Hold Your Hand*14」した。

 

「君って本当にセクシーだな。まるで、サージェントペパーズのジャケットの、上から2列目、左から9番目の人のようだ*15

「もう、The Fool On The Hill*16…」

そう言って彼女はリンゴのドラムソロのような*17涙を流した。

 

「さあ、僕のアパートにGet Backしよう*18。帰ったら俺の下半身のYellow Submarine*19で、Fixing A Hole*20してやるぜ」

「This Boy*21!」

 

僕たちはしっかりと抱き合った。飛行機の音が遠ざかっていく。まるで「Dear Prudence」の冒頭*22のように…。

 

 

ビートルズでいうと「I’m So Tired」です。文章が読みづらくなるので、知識をひけらかしたいだけの比喩はほどほどにした方がいいということがわかりました。反省して二度とやりません。

 

ではでは!

*1:かっちりしたスーツ姿のこと

*2:やたらと長く感じること

*3:ジョン・レノンのソロアルバム『マインド・ゲーム』の3曲目で、「あいすませんヨーコさん」という歌詞が印象的なナンバー

*4:『ラバーソウル』に収録されたジョージの曲

*5:ホワイトアルバム』に収録されているこの曲の冒頭には、飛行機のSEが使用されている

*6:『リヴォルバー』に収録されたジョージの曲

*7:2枚組であることから、「2人で1つ」になってくれ、転じて、結婚してくれ、という意味

*8:しばしば省略されてしまうこと。転じて、声に出されない言葉のたとえ

*9:ロバート・フリーマンが撮影したラバー・ソウル」のジャケット写真が歪んでいることから

*10:『ヘルプ!』に収録されたポールの曲

*11:『A Hard Day's Night』に収録されたポールの曲

*12:眉唾物の話、ホラ話であることのたとえ

*13:たくさんいることのたとえ

*14:強引に抱きしめることのたとえ。同曲の邦題が、やや強引な意訳である「抱きしめたい」であることから

*15:マリリン・モンローみたいだ、という時のたとえ

*16:丘の上にいる男に「バカ」と言いたいときに使う表現。『マジカルミステリーツアー』に収録された同曲より

*17:めったにお目にかかれないことのたとえ

*18:帰ろう

*19:下半身の黄色い潜水艦という意味

*20:穴を直すという意味

*21:コイツ

*22:前述の「Back In The USSR」の続きから始まる同曲は、飛行機が遠ざかる音でスタートする