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フリーの小噺と好きな音楽

かかし(フォークバンド)の名曲 30選①

ずいぶん長いこと追いかけていたラジオ番組が先週終わってしまった。

その番組は「The Nutty Radio Show おに魂」。FM NACK5で月~木曜の夜に放送されていた帯番組である。2003年、私が高1の時に始まってもう14年。高校時代の3年間はほぼ毎日聞き、関西に引っ越してからも地元に帰れば追いかけて、まだ自分が何かとつながっていることを再確認することができた大切な番組であった。

はじめて投稿したり、投稿が読まれたりした思い出などもあるが、今日はその辺は置いといて、この番組内でたびたび曲がかかっていたあるバンドの軌跡をまとめていきたいと思う。

そのバンドは、「かかし」。おに魂のメインパーソナリティの一人である、バカボン鬼塚を中心に結成されたグループである。モットーは、「最高のメロディに最低の歌詞を」。詳細は以下で。

かかし (フォークバンド) - Wikipedia

かかしオフィシャルサイト

 

常々紹介したいと思っていたグループなのだが、これも一つのきっかけと思って、2回に分けて、特に私が好きな曲をピックアップしてレコメンドしたいと思う。今日はバンドがメジャーデビューした1997年から2006年まで。

 

 

万博

万博

 

 

「不幸子」

「徹底的に不幸な女性」をテーマにした、かかしのデビューシングルであり代表曲。ちなみに、苗字が「不」で、名が「幸子」。

不幸の規模が後半になるにつれどんどんインフレを起こしていく過程が素晴らしく、初めてラジオで聞いたときは笑い転げた。というか、前情報がない状態で「次はどんな不幸だ?」と耳を集中させて聞くからこそ生まれる面白さで、CDを買って歌詞カードを見ながらだと成立しない類の笑いなのが悩ましい。この曲とラジオで出会えて本当に良かったと思う。

この時点ではまだフォークバンド然としたスタイルで、冒頭の木魚からガチガチにウェットで暗い曲調のはずなのだが、妙な間があって、そこがまた面白い。大体、どこの世界にデビューシングルの冒頭の楽器を「木魚」にするバンドがいるのだろうか。売る気が感じられない。バカなんじゃないだろうか。実際バカなのである。かかしのそんなところがたまらなく愛おしい。

バカボン&菊池のハーモニー(たぶん。バカボンのダブルボーカルかもしれない)がちょっとエヴァリーブラザーズっぽくもある。その、謎のさわやかさが曲とミスマッチして笑いを誘う。

 

「セックス」

セカンドシングル。結局、曲名は一度も歌詞に登場しないが、そこがミソ。「セッ」で始まる単語をひたすらつなぎまくるという、言ってみればそれだけの曲だが、その単語のチョイスがバカバカしくていい。「せっ…ルジオメンデス聴きながら」は最高。

フォークバンドと銘打っておいてセカンドシングルでいきなりラテン風味な曲調となる。ここから、かかしのワールド路線が始まっていく。

 

「センチメンタルガール」

「恋人が人外のモンスターだった」という曲。さわやかなアコースティックギターに導かれて始まる、アイドルポップ風のメロディ。最初は「普通の曲?」と思わせておいて、小さなほころびから徐々に加速度を増しながら歌の世界観が崩壊していくという、その後のかかしスタイルの一つのひな型となる重要曲。テンポが上がり、ストリングスがテンションコードを奏でる怒涛の後半部分は完全にホラー。

『不幸子』と同じく、この曲も、歌を映像化するには聴き手の想像力に頼るしかないという「音楽」の特性があったからこそなしえた類の笑い。初期かかしの到達点と言ってもいい名曲である。

 

「ダッチワイフ」

セカンドアルバム「万博(まんひろし)」の1曲目に収められたブルースロック。長いギターソロはどことなくテン・イヤーズ・アフター風。「フォークバンド」として始まったかかしは、このセカンドアルバムから一気にロックに舵を切り始める。そういう意味でいえば、この曲は彼らにとっての「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」に相当する曲と言えるかもしれない。

ブルージーなエレキギターに導かれて朗々と「ダッチワ~イフ」というフレーズがスピーカーから飛び出してきたときは、あまりのバカバカしさに全身脱力したものである。これだけ渋い曲にこれだけ内容のない歌詞を乗せるというのがかかしの真骨頂。

私事だが、学生時代あまりにもこの曲を好きすぎて、個人でミュージックビデオを作成した。その後の就職活動時、映像制作系の仕事につきたかった私は、いろいろな会社に「過去の制作実績」としてそのミュージックビデオを履歴書と一緒に送りつけた。その結果採用されたのが今勤めている会社である。「大人って、思った以上にバカばっかりなんだな」ということを2回も実感させてくれた、私にとって大切な1曲。やけにギターがうまいと思ったら、斎藤誠が弾いていた。

 

「ロング・ヘアード・ボーイ」

これもセカンドアルバム『万博(まんひろし)』からの1曲だが、初めて聞いたのはラジオ内。確か、「Hits! The Town」だったかな。実はそのラジオeditでは、ラストに、ビートルズ「ヘイ・ジュード」を明らかにパクったコーラスがしっかり聞こえたのだが、発売時には案の定削除されていた。アルバムを買ってこの曲を改めて聞き、あまりにも性急なフェードアウトに事情を察した私は大笑いしたものである。この、アーティストとリスナーのとてもプライベートな共犯関係が、私のかかしへの愛をさらに深めることになった。

歌詞は、「わき毛が伸びて彼女に会いに行く」というラブソング(なんじゃそれ)。バカボン鬼塚は7~8分でこの曲を書いたらしい。

 

「フサチコフ」

「不幸子」のロシアバージョン。元ネタがメジャーじゃないのにそれのロシアバージョンを作られても、という感じだが。

デビューアルバム『万博』に収められたが、かんっぜんに「ドナドナ」なため、ほとんど再販といっていいセカンドアルバムの『万博(まんひろし)』には収録されなかった。のちにメロディー・アレンジを全面変更して、サードアルバムに収録された。

 

 

 

SCARECROW

SCARECROW

 

 

 「サンダー・ボルト・ディナー・マシーン」

サードアルバム『SCARECROW』の1曲目を飾る、疾走感あふれるロックチューン。不覚にも「かっこいい!」と思ってしまうのが憎らしい。

歌詞は、「なにかわけのわからないものに乗って夜の街を飛ばすぜ!」というもの。「センチメンタルガール」と似たパターンで、「最初は普通の曲と思わせておいて、徐々に世界観が崩れていく」タイプの曲だが、その「崩し方」が凝っている。

「タイヤはない」の部分がきっかけで徐々に聞き手の想像が追い付かなくなるが、その「追い付かなくなる」歌世界のスピード感に慣れたところで、「毛深くない」というフレーズが出てくるのがうまい。「毛深い」ではなく、「毛深くない」としたバカボン鬼塚は慧眼というべきだろう。かかしの新時代の幕開けを予感させる名曲。

 

ズブロッカ

何も起こらない現実への仄かなルサンチマン。普段はバカバカしさと騒々しさの陰に隠れてしまっている、バカボン鬼塚のそうしたもう一つの普遍的なテーマを歌にこめた、ラップ風の名曲。大学時代に授業をサボって夕暮れ時に目を覚ましたことがある人間なら、誰もがこの曲の切なさ・やるせなさを理解できるのではないだろうか。狭くて汚い下宿先を思い出すセンチメンタルな一曲。

 

サードウェーブ」

「うんこを漏らす」という普遍的なテーマのハードロック。それ以上でもそれ以下でもない。ちなみにこのテーマは後に再度登場する。普遍的だから何回やってもいいのである。

世界で一番くだらない「ゴッド・オンリー・ノーズ」の使い方の事例。

 

「ブーラーグーソン」

「業界用語でラブソングを作る」というアイディアの勝利。歌詞の業界用語(?)を、普通の日本語に翻訳してみると、実は内容がとてつもなく薄いというのもポイントである。サビの大仰なメロディと、「ま~いて~たね~」というフレーズの無意味さが爆笑を誘う。もしかしたら高次の業界批判・アイロニーも含まれているのかもしれない。含まれていないかもしれない。ともあれ、歌詞・メロディ・アレンジ三拍子そろった名曲で、アルバムを通してのベストトラックだと思う。

 

「裸の馬」

これもラジオeditとアルバム収録バージョンではアレンジが違う。そのラジオeditは、完全に、もう本当に何から何まで完全に、イーグルスの「Take It Easy」だった。アルバムバージョンを聞くと、Aメロのメロディにその痕跡が残っている。さすがに許可が下りなかったか。

ちなみに、バカボン鬼塚は、テレビ東京系列で放送されている旅番組、「田舎に泊まろう」のナレーションを担当しているが、その「田舎に泊まろう」のオープニング曲が「Take It Easy」であったことに今気づいた。

 

「ネテネーゼ」

ある意味これも「業界批判」なファンクチューン。売れっ子ラジオディレクターという顔も持つ、かかしのリーダー・きっくんのイメージソング。とにかく「寝ていない」ということをアピールしまくるという歌詞だが、この曲も後半になるにつれインフレが起こっていき、しまいには「ワンクール」寝てないと言い出す始末。でも、この手のアピールをする人は世間に結構いる。バカボン鬼塚の「ウォンチュッ!」の言い方で持っている。

かかしの曲の中では珍しく、カラオケに収録されている。機種はUGA。個人的に、会社の飲み会の三次会あたりでたまに歌うが、ウケたりウケなかったりする。また、おに魂内で古坂大魔王がリミックスしたこともある。

 

 「ラブミーテンダー」

かかし流サザンソウルの傑作。このメロディとアレンジはホント好き。

歌詞は元鬼玉・水曜パーソナリティだったプリーズ大津田。この曲で高校生の私は「確変」という言葉を知った。

かかしの曲は笑えるものが多いが、実はその全てにとにかく救いがない。

「暗い世の中だけど、小さい希望を見つけて前を向いていこう!」

そんなメッセージを発信するという、ポップミュージックが社会に果たすべき役割を何一つ引き受けようとしていない潔さがある。この曲は特にそうで、絶望の中にいる人が、さらなる絶望の袋小路に向かって落ちていくのをただただ見せつけられる。プリーズ大津田はその後2010年に鬼玉をリストラ(本人談)されるわけだが、そういういきさつも込みで聞くと本当につらい。

私は、塩サバ好きな女性っていいと思う。

 

ということで、続きはまた次回。