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Add Some Comedy To Your Day

フリーの小噺と好きな音楽

天才てれびくんの伝説的音楽コーナー「ミュージックてれびくん」の名曲11選(1998~99年度編)

僕の職場の環境がもともとそういう傾向なんですが、20代も後半に差し掛かると「タメ年」の友達ってのが本当に少なくなっていきますよね。転勤したり、結婚したり、妊娠したり、保険の勧誘にあったり、ただなんとなく連絡を取らずにいたり。いろんなことが重なって疎遠になっていき、いつのまにか周りには割り勘で飲みに誘える奴がいないことに気が付きます。僕も若いころは、オッサンたちが「同学年」というだけでむちゃくちゃに盛り上がり、初対面でも一瞬で打ち解けあうのを見て、「オッサンとはなんと哀れな生き物なんだ」と思ったものですが、だんだんその気持ちもわかってきました。

「タメ年の人間」とは、大げさに言えば「同じ時代を生きた人間」のことです。大切な人はいるが、いつもどこか孤独を拭い去れない、糸の切れた凧のように空をあてどもなくさまよう感覚。そんな現代人に「タメ年」のヤツとのコミュニケーションは、「自分はちゃんと大地につながっていて、糸は切れずに地上に結ばれているんだ」という感覚を与えてくれます。名作映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』の中で、風間くんがふと口にした「懐かしいってそんなにいいことなのかなぁ」というセリフの答えがここにあるような気がします。「懐かしい」は、愛され、守られ、自分の地盤が確実なものである子供時代には理解しがたい感覚なのです。

 

長い前振りでしたが、今日からはNHK教育(今は『Eテレ』っていうのかな?)の名番組、「天才てれびくん」内で放送されていた音楽コーナー、「ミュージックてれびくん」にスポットを当て、その黄金期、1998年から2001年までに放映された楽曲の中から、これぞという名曲を選んで解説したいと思います。僕とタメ年±2年くらいの人(1986~90年生まれ)の人に見てほしい企画です。

 

『恋はあせらず』 

歌:ジャスミン・アレン 作詞・作曲:Lamont Dozier/Brian Holland/Eddie Holland

原曲はもちろん、The Supremesが1966年に発表した名曲『You Can't Hurry Love』で、一部歌詞を日本語に訳した、要はカバーである。が、当時小学5年生の、ミニ四駆ポケモンにしか興味のない男子がそんなことを知る由もなく、この曲は僕の耳に完全なる「新曲のアイドルポップ」として響いたことを覚えている。


恋はあせらず You Can't Hurry Love - YouTube

 

「でっでっでー、でっでっででー」という特徴的な「モータウンビート」(当然これも後で知った)のベースに導かれて登場するジャスミン・アレンの舌っ足らずな歌声は、音速で僕の胸を貫いた。結果的にここから僕のオールディーズ探究の道が始まっていくわけであるが、そのきっかけは、ジャニーズやAKBに熱を上げるのと同じ原理から始まっているのだから、人生どう転ぶかわからない。家庭の環境で、民放の音楽番組を見れなかった僕にとって、ジャスミン・アレンは初めてのアイドルだった。

 

『YAKINIC GO GO』

歌:松川佳以 作詞・作曲・編曲:種ともこ

この曲で、「タン塩はタレのついた肉を焼く前に網に乗せる」ということを学んだ。歌は時に親や教師以上に有意義なことを教えてくれるものだ。

完全に小学生離れした歌唱力を見せつけるのは、1997~98年度てれび戦士の松川佳以。曲提供は、今後この「ミュージックてれびくん」で数々の名曲を提供することになる種ともこで、コーナー初の書き下ろし曲となった。

単なるコミックソングにならないのは、1985年から現在まで、ポストユーミン世代の一人として、派手なヒットはないものの、群雄割拠の女性シンガーソングライター時代を生き抜いた種ともこの曲及びアレンジによるところが大きい。「社長」こと橋田紘緒(97~01年度てれび戦士)の「食べると中から、ジュワ~」というセリフが限りなく音楽的な響きを放っていたのもそのなせる業。

映像では、ストレッチマンやお猿のポッケといった、当時のNHK教育の名キャラクターたちが集った。音も映像も素晴らしい、98年度屈指の名曲。

 

『JUMP』

歌:安藤奏/ダーブロウ有紗 作詞・作曲:David Lee Roth/Alex Van Halen/Edward Van Halen 訳詞:タケカワユキヒデ

原曲はもちろんVan Halenが1984年に放った大ヒット曲だが、これもまた僕にとっては「新曲」だった。『恋はあせらず』が初めてのポップミュージック体験なら、『JUMP』は初めての「ロック」との出会いであり、目覚めであった。

コアなVan Halen及びへヴィメタルのファン層からは「日和った曲」「大衆に媚びたポップス」とバカにされがちな曲(違います?) だが、タケカワユキヒデとThat's on Noiseの作り出す突き抜けるようなサウンドは「ロック」以外の何物でもない。間奏のギターソロの部分で、てれび戦士たちがノリノリでエアギターを弾き倒しているが、この感覚、この初期衝動こそ「ロック」なのだと僕は声高らかに宣言したいと思う。

歌うのは98年度てれび戦士・安藤奏と、98~01年度てれび戦士で、現在もタレントとして活躍しているダーブロウ有紗だが、とにかく安藤くんがカッコ良すぎてたまらなかった。同性に対して抱く、少年期特有の説明のできないモヤモヤした気持ちに戸惑い揺れた、10歳の日の思い出がよみがえる。安藤君への募る思いから、その後小遣いをためて近所のブックオフヴァン・ヘイレンのベスト盤を買った時が、思えば僕が初めて洋楽のCDを購入した日なのだった。今もそれを家のCDデッキに乗せたときの興奮を思い出す。

ありがとう、安藤くん!

 

『恋のギルティー』

歌:モンキークイーン 作詞:Mike Stock/Matt Aitken/Peter Waterman/Sarah Dallin/Siobhan Fahey/Keren Woodward作曲:Matt Aitken/Mike Stock/Peter Waterman訳詞:タケカワユキヒデ 

僕はこの「ミュージックてれびくん」というコーナーの最盛期を1999年度だと勝手に思っているのだが、その理由がこの〈モンキークイーン〉という3人組にある。とにかくかわいい。かわいすぎる。安藤くんへの説明しがたいモヤモヤはこの3人組の登場で霧散した。夏目漱石の「こころ」の中で「先生」が主人公「僕」に言うセリフに「異性と抱き合う順序として、まず同性の私の所へ動いて来たのです」というのがあるが、そういうことだ。仮に僕と安藤君が出会っても所詮最後に性交渉はない。純愛は、この人種を超えた鉄壁のガールグループに踏みにじられた。さようなら、安藤君。君のことはいつまでも忘れないよ。

ビジュアル・歌唱力・ダンス、すべてが圧倒的で、そのパフォーマンスは他の追随を許さない。1年前の『恋はあせらず』から信じられない成長を遂げたジャスミン・アレン、かすれ気味のキュートなボイスがたまらないモニーク・ローズ、そして当時の僕の推しメン、佐久間信子。無敵のガールグループの誕生だった。

原曲はバナナラマの87年のヒット曲『Love In The First Degree』だが、オリジナルが80年代の空気満載のディスコ風味で、作られたビデオも時代がかっている(これはこれでいいとは思うが)のに対し、モンキークイーンのこのバージョンは、あくまでキュートなガールポップ仕立て。原曲の邦題が『第一級恋愛罪』(今見るとダサい!)なところを『恋のギルティー』と60年代ポップス風味にしたのもポイント。個人的にはミュージックてれびくんというコーナー全曲を通しての最高傑作だと思う。

 


Bananarama - Love In The First Degree (OFFICIAL ...

こちらがそのケバい原曲のPVです。

『Can do it!』

歌:ウエンツ瑛士、山元竜一、福田亮太、Gofull-sun作詞:坂田和子 作曲:MASAKI

〈モンキークイーン〉が女の子最強グループなら、その男の子版はこの3人、という趣。説明不要のウエンツに、ハスキーボイスの山元竜一、そして小学生にしてこの渋味・福田亮太の3人組というドリームチームが歌うのは非常にポジティブなダンスナンバー。夢も希望もなかった小学6年生の僕に、このポジティブな曲がどれだけ勇気をくれたか計り知れない。

 

『ゴォ!』

歌:棚橋由希 作詞:サエキけんぞう 作曲:奥田民生

松田聖子中森明菜らを中心とした80年代のアイドル全盛時代を、おニャン子クラブが粉々に破壊しつくした後の90年代に、「アイドル冬の時代」が到来したのは周知の事実。しかし、そんな混沌と闇の支配する「アイドル冬の時代」だからこそ生まれた迷曲があった!それがこの『ゴォ!』。作詞:サエキけんぞう、作曲:奥田民生という恵まれた陣営がこの曲を託したのはなんと山瀬まみ山瀬まみが歌うハードコアなど当時も今もどこに需要があるのか全く分からないが、ともかく生まれ、そして歴史に埋もれようとしていたこの珍曲を天てれスタッフが発掘したのだけは確か。すごいぞNHK


山瀬まみ - ゴォ! - YouTube

エキセントリックではあるが、そこはさすがの奥田民生。曲に破たんは全くない。そしてまみちゃんに代わってこの曲を歌うのは、96~99年度のてれび戦士で、たぶん誰よりもキャラ立ちしていたターナーこと、棚橋由希。過去の名場面を織り交ぜた映像と、ターナーのポジティブな声がぐんぐん曲を加速させていく。混沌からこの名曲を救い出したターナーの功績はもっと評価されてもいいんじゃないかと思う。

 

『恋は早い者勝ち』

歌:大沢あかね中田あすみ 作詞:岡部真理子 作曲:藤生善一

原曲はYOYOYOという日本のロックバンドだが、未だに詳細がよくわからない。どういう経緯でこのグループのこの曲をカバーしようということになったのか不明だが、たぶんスタッフの誰かが好きだったとか、そんな理由だったんじゃないだろうか。原曲と比べるとアレンジがほぼ同じなので、考えられた形跡があまりない。


YOYOYO - 恋は早い者勝ち [PV] - YouTube

曲は90年代にありがちなラテン風味ロックだが、なんといってもキモは大沢あかね中田あすみのダブルボーカルで挑んだことであろう。当時の友人、橋本君と山口君と僕の3人で、「大沢派」「中田派」に分かれ徹底討論が行われるほど、この曲とビデオは小学生男子の心を鷲づかみした。原宿で戯れる美少女二人を見て、田舎の少年は「東京の女の子」に対する恋慕で焼き焦がれそうになったのをよく覚えている。

ちなみに僕は大沢派だったが、今は別にファンではない。

 

『ハッピーマン』 

歌:石部里沙 作詞・作曲:奥居香

奥居香プリンセスプリンセスの存在を知るのはもう少し後なのだが、とにかく「中学生が歌う曲か!?」と驚愕したことは覚えている。当時小学6年生の僕にとって、「中学生の女子って、みんなこんな感じなのか?」と、憧れを超えて恐怖すら覚えてしまった曲。

 

 

『君の声がする』 

歌:饗場詩野 作詞・作曲:遊佐未森

矢野顕子からつじあやの奥華子、そして現在注目の松尾優まで脈々とつながる〈すっぴんナチュラル系シンガーソングライター〉の流れの中で、忘れてはならない存在の一人が遊佐未森だ。大きなヒットはないが、『地図をください』『夏草の線路』『東京の空の下』といった佳曲で確かな足跡を残している彼女に、饗場詩野(96~00年度てれび戦士)の澄んだ歌声の親和性を見出して、書き下ろしを依頼した天てれスタッフの慧眼をほめたたえずにはいられない。これは本当に名曲だと思う。

 

 

「ノコギリ」という楽器を初めて知り、その音色が描くやさしい世界にやられてしまったのも思い出深い。

 

『運命’99』

歌:悪魔なエンジェル(大沢あかね中田あすみ徐桑安安齊舞) 作詞:森若香織 作曲:黒沢健一

これもまた「アイドル冬の時代」に生まれた名曲。オリジナルを歌ったMelodyは93~97年に活動した3人組アイドルユニット。もう少し時代が遅ければ、SPEEDとまではいかなくても、MAXくらいの立ち位置までは行けたんじゃないだろうか。冬の時代に消えた名グループの名曲を、またも天てれは見事に救った。「ミュージックてれびくん」というコーナーがなければMelodyというアイドルグループもこの曲も、僕の人生で聞くことはなかったに違いない。


Melody(アイドルグループ)- 運命'95 - PV - YouTube

徐桑安安齊舞という最年少コンビを大沢あかね中田あすみが支えるという豪華な構図。これも「4人の中で誰が好きか」というテーマで前述の橋本・山口両氏とさんざん討論した。本当は舞ちゃんが好きだった僕だが、ロリコン疑惑をかけられるのが怖かったので、大沢派ということにしておいた。ちなみに今は別にファンではない。

「ホントだってばホントだってば」のキャッチーなサビから始まる展開でグッと心をつかまれる名曲で、99年の暮れに放送された「リクエスト・アウォード」では、堂々のリクエスト1位に輝いた。

 

『The Longest Time』

歌:飛び出せ!ステッグマイヤーズ(リサ・ステッグマイヤー、棚橋由希、ウエンツ瑛士ジャスミン・アレン、ジェームス・マーティン、ダーブロウ有紗) 作詞・作曲:Billy Joel 訳詞:タケカワユキヒデ

ビリー・ジョエルの「イノセント・マン」というアルバムは、モータウンドゥーワップといった、50年代から60年代のアメリカンポップスの明朗さを凝縮し、洗練させた素晴らしい名盤で、個人的に一番好きなビリー・ジョエルのアルバムなのだが、その中でも、『The Longest Time』は特に忘れがたい名曲である。

 

イノセント・マン

イノセント・マン

 

 

そんな名曲を教えてくれたのが天才てれびくんという番組だった。オリジナルのビリー・ジョエル一人多重録音ももちろん素晴らしいが、てれび戦士リサ・ステッグマイヤーの、まさに「イノセント」なハーモニーもまた素晴らしい。当時小学6年生だった僕だが、ここから山下達郎の「On The Street Corner」に到達するまでの距離は、今見ると想像以上に近い。僕のその後の音楽遍歴を決定づけたのもまた、天才てれびくんだった。

 

というわけで、今日は98年度と99年度のミュージックてれびくんの中から、僕の選んだ名曲を紹介しました。特に99年度は本当に前曲素晴らしいので、ぜひ皆さんにも見て、聞いてほしいと思います。

 

本当はミュージックてれびくんそのものの映像のリンクを貼りたかったのですが、当然天下のNHKなので、厳しいです。ニコニコ動画とかにも見ると上がっているみたいですが、いつまでも残ってはいないでしょう。ということで、上記で紹介した曲は『JUMP』と『The Longest Time』を除いてこちらのDVDで、確認できます。

 

 

僕と同学年ならあなたはもう28歳のはず。当時ならいざ知らず、今なら買えない値段ではないでしょう。たまには「大人も悪くないな」と思ウことのできるチャンスです。詳細なデータや秘蔵エピソードなども見れるお得版です。是非に。

明日は2000年度のMTKを取り上げられたらいいと思っています。でもやる気が起きなかったらやりません。ではでは。