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ロックンロール落語「火焔バスドラ」

※以下の噺はフィクションです。ハードオフ様のどこかの店舗で以下のようなやり取り、商品の取り扱いがあるという事実はございません。

 

専務「ちょっとあんた、あんたってば」

オーナー「なんだお前ぇ、店の中では『オーナー』って呼べって言ってるだろ」

専務「何が『オーナー』だい。またくだらない、売れないようなもの仕入れてきて。なんだいこのボロボロのバスドラムは。こんなもん店に置いといたら、また本部のスーパーバイザーが来たとき怒られちゃうよ。まったく、怒られるのは私なんですからね!」

オーナー「何がスーパーバイザーだ。ふざけんな。このハードオフ春日部北店のオーナーは俺だ。俺が一番偉いんだ。その俺が、店に置いとく品を自分で決めて、何が悪いってんだべらぼうめ」

専務「偉そうにするんじゃないよッ、バカッ!あんたはね、リサイクルショップ経営者としての才能なんかみじんもないんだからねっ!」

オーナー「何をっ!」

専務「じゃあいいかい。この前仕入れた、そこにある『ジミ・ヘンドリックス本人が使用していたピック』とかいう品、あれなんだい?5万円払って仕入れてきたあれ、ただのそこらのホームレスの抜けた歯じゃないかいっ!あんなもんいつまで置いとくつもりだいこのバカッ!」

 

Are You Experienced?

Are You Experienced?

 

 

オーナー「お前は物の値打ちがわからん奴だな。あれは、間違いなくジミヘンのピックだ」

専務「バカ!ジミヘンがね、あんな臭い歯なわけないでしょうが!まだあるよ。これだよこれ、この『ジム・モリソンがマイアミライブで自慰行為に及んだ際に射精したものを採取した精液』。こんなもん店頭に置いといたらね、公安委員会からね、古物商許可取り消されるよこのバカッ!FC契約だって即解消だよまったく!」

 

Doors

Doors

 

 

オーナー「それはマイアミのとあるラブホテルから直々に取り寄せた由緒正しい…」専務「お黙りッ!」オーナー「ひっ」

専務「いいからそこに並べたゴミクズ、全部まとめて処分するんだよ!そのバスドラも、今日中に。いいかい、わかったねッ!」

オーナー「わ、わかったよ…」

 

オーナー、専務の剣幕に押され、しぶしぶ商品を処分するようバイトの子に命じる。

 

バイト「しっかしこのバスドラ、本当にボロボロだな。オーナーもよくこんなもん仕入れてくるよなあ…。なんかで爆発させたみたいだ。しかもドラムセットじゃなくてバスドラムだけで8万円で仕入れてきたなんて、専務の言うように、オーナーにはリサイクルショップの才能はゼロだ。俺も早くこの店をやめて、バンドマンとして食っていけるよう頑張らないとな」

とか何とか言いながらゴミをまとめるバイト君。

バイト「でも、俺もドラマーとして、8万円のバスドラがどんな音を出すのか気になるところだ。ちょっと一回鳴らしてみようか」

 

そういってバイト君、ボロボロのバスドラムをドンドンドンドンと鳴らしてみる。

 

バイト「おっ。こりゃ案外いい音するんじゃないか?」

オーナー「こらバイトっ、何サボってんだ!さっさとそれトラックに積んで提携先の廃棄物処理業者のとこに持ってけ!」

バイト「あっ、オーナー。すんません」

 

そこにサングラスをかけたガタイのいい男と、スーツを着た小男が近づいてくる

 

スーツの男「失礼します。さっき聞こえたバスドラムの音ですが、あれはこちらの商品の音でしょうか?」

オーナー「えっ?ああ、はいそうなんですよ。すいませんねうちのバイトがドンドコドンドコうるさくして。迷惑だったでしょう。街中でバスドラ鳴らすなんざ、ゆとり教育の弊害ですよ、まったく」

スーツの男「いえいえ。それよりもそちらのバスドラム、大変興味深いと、私がマネージメントしている、うちのドラマーが申しておりまして。一度しっかり拝見させていただきたいので、まだ買い手がついていないのであれば、こちらの住所までお持ちいただきたいのですが」

オーナー「えっえっ?こんなボロボロのバスドラを?いや、それは構いませんがね、でもね、そんな期待するようなものではないですよ。だって、こんなボロボロなんですよ?」

スーツの男「いや、そのボロボロさ加減こそ、うちのドラマーが探し求めていたバスドラであるという動かぬ証拠となるやもしれません。ご期待にかなうだけの金額はお出しできると思います。なにとぞよろしくお願いいたします」

 

そう言われて、オーナー、半信半疑で指定された住所にやってくると、そこはとんでもない大豪邸。

 

オーナー「こんなすごいところに、ボロボロのバスドラ持ったハードオフの制服を着た俺が入っていいんだろうか…。あのサングラスをかけた男、ずいぶん金を持ってるドラマーみたいだが、もしかしたら俺を期待させてだましてがっかりさせて、それを見て笑いものにする気なんじゃないだろうか。ああ、やっぱり俺はワイフの言うように、リサイクルショップの経営者なんか向いてないのかもしれない…。脱サラしてハードオフのFC始めたのは失敗だったんだ…」

 

オーナー、すっかり自信を無くして客間に入ると、この前のスーツの男が笑顔で出迎える。

 

スーツの男「本日はわざわざお越しいただきまして、大変ありがとうございます」

オーナー「と、とんでもねえことで。あ、あの、その、これが先日のバスドラでございますです、はい」

スーツの男「重ね重ねありがとうございます。では、念のため少し奥の方で調べさせていただきますので、恐れ入りますが今しばらくお待ちくださいませ」

オーナー「あ、あの、無理して買わんでもいいんですよ!なんなら差し上げますからね!」

 

スーツの男、冗談だと思って奥へ引っ込む。5分ほどすると、笑顔で戻ってくる。

 

スーツの男「確認させていただきました。やはりあのバスドラムは我が主人、村上ポンタ秀一が探し求めていたものでございます。買取させていただきます!」

オーナー「マジすか?!いやいや騙されないですよ、ドッキリでしょ。この私をドッキリにかけて笑おうってんでしょ!」

スーツの男「とんでもございません。確かにお買い求めになられるそうでございます。してオーナー様、こちらいくらでならお売りくださいますでしょうか?」

オーナー「いくら?いくらと言われますとね、あれはそうですね、8万円で仕入れたんでね、そうですね、ええ、はい、まああのその、800円くらいでいいです、はい」

スーツの男「おお、800万円でございますね!かしこまりました」

オーナー「800万円!ええああ、はいはい、そうですか。そうですかー、800万円、なるほどなるほどー、そういうことですねー…。オイオイオイオイ(突然むせび泣くオーナー)」

スーツの男「オーナー様!?800万ではいけませんか?!そんなに涙を流してまで売りたくないのですか!?」

オーナー「いやいや、売ります売ります。売るのも買うのもハードオフハードオフ春日部北店でございますー、オイオイオイオイ(むせび泣くオーナー)」

スーツの男「オーナー様、買い取りということでよろしいのですね?!」

オーナー「結構でございます結構でございます。御買取り、大変ありがとうございます!」

 

こうしてボロボロのバスドラムと引き換えに、オーナーには800万円の小切手が手渡されたのでございます。

 

オーナー「ところでマネージャー様、あのボロボロなバスドラに、どういった理由で800万円もの値がついたのでございましょうか?」

スーツの男「おお、オーナー様もご存じなかったのですね?!実は我が主人、村上ポンタ秀一が申すことには、あのドラムは、ザ・フーという高名なロックバンドのメンバーの、キース・ムーンという偉大なドラマーが、あるテレビ番組でパフォーマンスのために大量の火薬を詰め込んで爆発させた、世に二つとない『火焔バスドラ』というプレミア物の名器を復刻させたものなんだそうでございます」

オーナー「そうでございますかそうでございますか。まあ買ってくれるというのならばこっちとしてはなんだってかまわないんですがね。なんにせよ、返品は受け付けませんからね!」

スーツの男「承知しております」

オーナー「では帰ります。ポンタさまにもよろしくどうぞ!ありがとざしたっ!」

 

オーナーそう言って、足早に村上邸を去るのでございます。

 

 

マイ・ジェネレイション+12

マイ・ジェネレイション+12

 

 


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飛んで帰ったハードオフ春日部北店、専務がソワソワして待っております。

 

オーナー「今帰ったぜ、マイハニー!」

専務「ああ、あんた、いいんだよ、そんな無理して明るい声出さなくったって。どうせだめだったんだろ。あたしもね、今朝はちょっと言い過ぎたよ。商売はいい時もあればダメなときもあるよ、だからさ、そんな無理して、売れたふりして喜ばせようとしなくたっていいんだよ。私たち夫婦じゃないかい、苦しいことも楽しいことも、分かち合ってこその…」

オーナー「バカバカバカバカ、何言ってやがるこん畜生!売れたよ売れたんだよあのバスドラ」

専務「売れた?へえ?そりゃすごいね。いくらで売れたんだい?」

オーナー「(なんでも鑑定団のオープンザプライスの要領で)一、十、百、千、万、十万、百万、はっぴゃくまんえん!」

専務「800万!すごいわダーリン!あんたやっぱり最高のオーナーよ!」

 

オーナーは最高

オーナーは最高

 

 

オーナー「どんなもんだいこの野郎!しかしこれでリズム楽器は売れるってことがわかったぜ。今度はあれだ、ベース仕入れて売りさばこうぜ!」

専務「あらダーリン、ベースはダメよ」

オーナー「ダメ?なんで?」

 

専務「だってベースは高音、鳴らない(高値ならない)」

 

(♪出囃子)

 

 

Pearl パール バスドラム MJ-220B  No.23 レッド

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